日本固有の演劇であり、伝統芸能の1つでもある歌舞伎。
江戸時代に庶民の娯楽として楽しまれるようになり、最近は日本人だけでなく、外国人の観光客にも人気があります。
歴史のある歌舞伎だからこそ、観に行く時にはどんな服装で行けば失礼にならないのかなど、分からないことも多いですよね。
そこで今回は、歌舞伎を見に行く服装、とくに男性の服装、ジーンズでも良いのかなどを紹介します。
併せて歌舞伎を観劇する際のマナーも紹介します。
歌舞伎を観に行く服装 男性は?
歌舞伎を観に行きたいと思った時に不安になるのは、どんな服装で行けばいいのかということです。
日本に昔から伝わる歌舞伎だからこそ、服装にも決まりがあり、何も考えずに行ったら周りから浮いてしまうかも…と、不安になってしまいますよね。
でも、大丈夫です。
歌舞伎を観に行く服装に、特に決まり(ドレスコード)はありません。
しいて言うならば、「他のお客さんに不快感を与えるような服装」は避けましょう。
清潔感のある服装で行くのは最低限のマナーです。
また、観劇の妨げになってしまうことがあるので、帽子をかぶるのは避けておいた方が無難です。
でも、それ以外には特に決まりがないので、カジュアルな服装で行くのもよし、着物で行くのもよし、自分の好きな服装で行って大丈夫ですよ。
男性ならば、パンツにジャケットを合わせたきれいめスタイルでもいいですしポロシャツなどのカジュアルな服装でもいいですね。
もちろん、着物で行ってもOKです。
長時間の観劇になるので、なるべくリラックスできる服装で行きましょう。
ジーンズや浴衣はNG?
最近は外国人観光客による観劇も増えていてジーパンなどのラフな格好な方も多いことから見ても、ジーンズでもOKなのです。
浴衣についても劇場側でNGとは言っていないので入場を断られるようなことはありません。
ただし、浴衣は元々湯上り着であり下着なので歌舞伎座のような正式な場には不向きとする見方もあります。
そこで、念のため寝間着のような生地や柄は避け、浴衣の合う夏の季節に半襟や足袋をつけお太鼓を締めて行けば安心です。
浴衣大歓迎などと謳われている公演を選んで着ると、なお安心です。
なお夏場は冷房がかなり効いている可能性があるので、足袋はそういう意味でもあった方が良いでしょう。
歌舞伎座のフロアや座席による違い
フロアや、一幕見席、桟敷席など座席の種類により服装の雰囲気が違います。
フロアによる違い
1、2階では、ワンピースにパンプスくらいの、それほどかしこまったものではないけれど、ちょっとしたお出かけ風な服装が多いです。
3階は、浴衣など若干ラフな服装が見かけられます。
一幕見席
一幕見席はカジュアルです。
全て見るのは大変そうなのでまずはひとつだけ見たいという場合などに合うのが、一幕見席です。
これは予約ができず当日券のみで、幕ごとに決められた販売開始時間に外で並んで購入し、自由席が買えない時は立ち見になるので、動きやすい服装が必須です。
このためカジュアルな服装が多く見かけられます。
外国人にはカジュアル過ぎる印象を受ける服装の方もいるほどですが、日本人であればあまりにラフ過ぎる服装は場違いな感じがしてしまいます。
桟敷席
桟敷席となると、きっちりと艶やかにお着物を着こなしている方を見ることができ、歌舞伎ならではの日本古来の文化を味わえる雰囲気です。
なお桟敷席については詳しくは下の記事で説明しています。
参考にしてください。
服装以外にも!歌舞伎を観劇する時のマナー
特別、歌舞伎だからというより、映画館や劇場と同じような一般的な配慮、マナーがあれば問題はありません。
江戸時代には上演中もお弁当やお菓子をつまみ、お酒をのみ、タバコを吸いながら観劇していたようで、そんな様子の絵も残されています。
今でも休憩時間に席でお弁当を食べることができます。
自分も周囲もリラックスして楽しめるように心がけることが大切ですね。
ここでは、服装以外にも、歌舞伎を観劇する上で知っておきたいマナーを4つ紹介します。
客席への出入り
1つ目は、客席への出入りについてです。
客席へ出入りするのは、原則として幕間以外はNGです。
歌舞伎では、休憩時間を「幕間(まくあい)」といいます。
この休憩時間以外に出入りすると、観劇の妨げになってしまうので気をつけましょう。
開演5分前にブザーが鳴るので、それを合図にして座席に戻るようにすると安心ですよ。
もちろん例外もあります。
歌舞伎座には1階と2階に桟敷席(さじきせき)という席があり、ここは廊下から直接座席に入ることができるので、多少ゆとりがあり、出入りがしやすくなっています。
値段は少し高くなりますが、幕間以外にも出入りをすることができるのでお子様連れの方には特におすすめです。
写真撮影や録画
2つ目は、撮影や録画についてです。
これは当たり前のことですが、写真の撮影や録画は禁止されています。
最近のSNS流行でついうっかりいつもの習慣で撮影してしまいがちですので、意識しおく必要があります。
せっかくだから舞台の写真を撮りたいと思う気持ちは分かりますが、他の方の迷惑になるので絶対にやめておきましょう。
飲食
そして3つ目は、飲食についてです。
歌舞伎の観劇は4~5時間という長時間のものなので、飲食することができます。
ただ、もちろん客席で食べることになるので、周りに対する配慮が大切です。
音や匂いのする食べ物や飲み物は避けるようにしましょう。
どんな物が相応しいかと言うと、「幕の内弁当」を思い浮かべてもらえると分かりやすいです。
実はこの幕の内弁当、その名からも分かる通り、もともとはお芝居の幕間に食べる食事だったのです。
幕の内弁当に入っている物は、一口サイズのおむすびや汁気のない料理などですよね。
バリバリと音がする物や、匂いの強いものは入っていません。
また、袋を開けたり、包装を破ったりする音も意外とよく響きます。
劇場の食堂では、予約をしておくと幕間の時間に合わせて料理を準備してくれたり、桟敷席なら運んでくれたり、後片付けもしてくれます。
そんなサービスを利用するのも観劇の楽しみの1つですよ。
みんなが歌舞伎の観劇を楽しむことができるように、心配りを忘れないようにしましょう。
他の人の迷惑にならないように
帽子や大きなヘアスタイル
帽子をかぶっていたり、髪の毛をかなり盛ってしまうと後部座席の方の観劇の迷惑になりかねないので、注意が必要です。
子供がぐずったときの対応
何かあれば声を出したり音を立ててしまうのが子供です。
言ってもすぐに静かにしてくれない時はロビーに出るなどして他の観客の邪魔にならないようにします。
言い聞かせる効果を上げるために、飴など音の出ない子供のお気に入りおやつを用意しておくと良いですが、上演中は個包装を開ける音にも配慮は欠かせません。
スマホ・携帯電話の扱い
スマホや携帯電話は必ず電源を切っておきます。
上演中はマナーモードのバイブ音もかなりの音量で響くので、全てOFFにします。
その他の雑音
場内は乾燥しがちですので喉が乾き咳をしたくなってしまいますが、これも結構な雑音になってしまいます。
のど飴や飲み物など咳止め対策が必要です。
もっと歌舞伎を楽しむには?
感動したり気持ちが盛り上がった時などに拍手や掛け声をかけることができると、もっと歌舞伎を楽しめます。
ところが自分が「良い!」と思ったタイミングでの拍手や掛け声が、お芝居のリズムを崩してしまう可能性あります。
歌舞伎では見せ場や見得を切った時に拍手をしたり掛け声をかけたりすることがお芝居を構成する一部になっていますので、タイミングは重要です。
最初のうちは周りに合わせて拍手をし、掛け声は「大向こう」と呼ばれる常連さんに任せておくのが無難です。
これらをふまえて拍手をし掛け声を楽しむことで歌舞伎の醍醐味を味わえます。
他にも歌舞伎をもっと楽しむポイントを紹介します。
名物店の食事・弁当
歌舞伎座には各階にお食事処があり、名物料理や弁当が楽しめます。
さらに詳しい内容は下の記事で説明していますので参考にしてください。
⇒ 歌舞伎座は食事の持ち込みOK?幕間のお弁当も楽しみのひとつ
鳳(おおとり)
2階「鳳(おおとり)」では、風情ある装飾に包まれた落ち着いた雰囲気で、季節ごとのごちそう膳などが楽しめ、アルコールメニューもあります。
予約が必要です。
吉兆
3階には高級料亭として有名な「吉兆」で、月替わりの松花堂弁当などをゆったりとしたお席で味わえます。
予約が可能です。
あまりにゆったりしすぎないよう、幕間の時間を確かめてからの利用がおすすめです。
花籠
3階にはリーズナブルな価格で食事が楽しめる「花籠」もあり、アルコールも含めメニューが豊富です。
檜
1階にはサンドイッチなどの軽食やスイーツ、コーヒーなどのメニューがある喫茶室「檜」があります。
やぐら
歌舞伎座は食事の持ち込みも可能です。
幕の内弁当からサンドイッチまで豊富な品揃えで人気のお弁当処「やぐら」が、劇場真下の木挽町広場地下2階にあります。
地下鉄の改札を出てすぐに購入でき、そこからエスカレーターに乗るともう歌舞伎座なので、お弁当を持っての移動距離が短くて便利です。
桟敷席でない場合は、膝の上で食べることを想定した大きさのものを選ぶのが良いです。
売店のお土産
歌舞伎座の売店は昔から充実していましたが、新しい歌舞伎座に建て替えた際、地下に木挽町広場ができ、ビルの5階にも売店ができ、さらに豊富な品揃えとなりました。
毎月の公演にちなんだお土産や季節の品もあり、歌舞伎が日本を代表する伝統芸能であることから和小物の品揃えが特に充実しています。
歌舞伎の登場人物が描かれている絵葉書や隈取をデザイン化した手ぬぐいは、歌舞伎観劇の思い出に、お土産にピッタリです。
隈取をしたスヌーピーや、道成寺の衣装を着たふなっしーなど変わり種も楽しいです。
歌舞伎座1階のお土産処木挽町に「佃宝」が出店していて、大きなガラスケースに様々な種類の佃煮が陳列されていて、ふき豆が人気です。
木挽町広場には「和泉庄」が出店していて、ここではその場で焼いて販売しているきんつばが人気で、焼き立てを食べることができます。
歌舞伎座3階の売店で購入できる「めで鯛焼き」は、幕間の行列であっという間に売り切れてしまうほどの大人気です。
見た目は普通ですが中に紅白の白玉が入っている粋なお菓子で、5個単位なら劇場で予約可能です。
便利なグッズ
歌舞伎は古い言葉が多く分かりにくい場合があるので、観劇の前にプログラム(パンフレット)などであらすじを頭に入れておくと、もっと楽しめます。
また劇場ではイヤホンガイドの貸出が利用できるので、それで場面の説明を聞くと楽しみが倍増します。
高価な桟敷席を避けて遠くからの観劇となってしまう場合には、オペラグラスがあると舐めるように舞台を観ることができ、さらに歌舞伎を楽しめます。
舞台全体を見渡しながら観劇する要所要所で、役者の顔や見得、繊細な手つきなどをオペラグラスで楽しむのがおすすめです。
歌舞伎の服装 男性は?:まとめ
日本に昔から伝わる歌舞伎。
伝統ある歌舞伎だからこそ、観劇に行く時の服装に悩んでしまいますよね。
でも、大丈夫です。
歌舞伎を観に行く服装に、特に決まりはありません。
男性なら、きれいめスタイルでもカジュアルな服装でも、もちろん着物でも大丈夫です。
他のお客さんに不快感を与えてしまうような格好は避けて、なるべくリラックスできる服装で行きましょう。
そして歌舞伎を観劇する時のマナーで全てに通して言えることは、「観劇の妨げになるようなことをしない」ということです。
音や匂い、視界を遮る行動などに気をつけて、歌舞伎の観劇を楽しみましょう。
劇場の建物からしても伝統と風格が漂う歌舞伎は、日本文化を多方面から堪能できます。
行く前から予習したりお気に入りの服装を選んでワクワクし、観劇、食事、お土産まで、和テイストにどっぷり浸かれるポイント満載です。
初めての歌舞伎を満喫できるよう、ぜひこの記事をお役立てください。
なお落語を聴きに行くときの服装については下の記事を参考にしてください。